光よ、そして緑よ by上田真樹
2020年1月31日。
ウォームアップとして日本語の男声合唱曲から1曲紹介します。
ローテンポでノスタルジックな前奏から始まり、
歌が入ってからは7連符や6連符での滑らかな進行を続けるピアノが印象的な曲です。
早稲田大学グリークラブが2011年の定期演奏会に際して委嘱した同組曲は、
グリー生の「恋の歌が歌いたいです!」という熱い想いを受けた上田が、
男くさくなり過ぎないように「彼女(=銀色)の詩で爽やかな、
それでいてちょっとほろ苦い恋の歌を書いてみたい」と銀色の詩に付曲しました
[上田2011]。
「光よ、そして緑よ」と歌い出すため本当に爽やかな印象を受ける同曲ですが、
恋の歌として聴くと中々に気恥ずかしいことを歌っています。
また、冒頭で書いたようにピアノは6連符や7連符で動き続けます。
歌とピアノのテンポ感を合わせる時は、
ピアノがon beatで弾く四分音符が基準になります。
この辺りの構図からも、
ピアノの作る甘い空間と、それに酔っている合唱という
「青春真っただ中」「恋は盲目」と言わんばかりの曲展開に見えてきます
(解釈には個人差があります)。
演奏する際に注意するとしたら、
自己陶酔にまみれるとピアノしか印象に残らない曲になってしまう点です。
もちろんスラーのついた滑らかな進行ではありますが、
歌い出しはGrandioso con spirito、弱声部はdolceといった表現指示のほか
スイッチポイントにはアクセントやmarcatoが施されています。
楽譜上のことに気をつけるだけで、十二分に説得力のある演奏ができます。
以上、「Ⅰ.光よ、そして緑」の紹介でした。